NV350 キャラバン チェアキャブ 開発レポート

広くなったNV350 キャラバン チェアキャブで、車いす4名乗車を実現しました。

今年、11年ぶりとなるフルモデルチェンジを行った「NV350 キャラバン」。従来に比べ、車内の長さが約300mmも長くなりました。この空間を利用して、NV350 キャラバン チェアキャブでは、多くのことが実現しました。

最大のテーマは、車いす4名乗車

1973年の発売以来、5代目となる今回のNV350 キャラバン チェアキャブ。これまで10名乗り(車いす2名)のM仕様、10名乗り(車いす1名)のC仕様、8名乗り(車いす3名)のD仕様の3タイプをご用意し、主に施設の送迎用として絶大なご支持をいただいてきました。キャラバンは「運転しやすい、大きすぎないジャストなボディサイズ」が好評でしたが、反面、車いすは最大3名までしか乗車できませんでした。「施設の方から『4名乗車できるとありがたい』という声が多いことは聞いていました」(高野氏)

NV350 キャラバン チェアキャブ3つの仕様

D仕様

車いすが最大4名乗車できます。車いすの利用者を多く送迎したい場合に向いています。

M仕様

車いすが2名乗車できます。歩ける方、車いすの方をバランスよく送迎したい場合に向いています。

C仕様

車いすが1名乗車できます。歩ける方が多い場合の送迎に向いています。

D仕様では、車いす4名乗車が可能。サード補助席を取り外すと、リクライニングタイプの車いす3名を乗せられる。フロアは広く、フラットだ

今回、車内の長さが約300mm長くなったことで、D仕様において、「車いす4名乗車」が実現しました。
実現のカギは、折りたたんだセカンドシートの下に、車いすの方の足が入るよう、シートを上部にはね上げられるようにしたことでした。「女性の方の力でも簡単に上部にはね上げることができ、シートに戻した際にもきちんと固定できるように、独自のリンクを開発しました」(内田氏)
車いす4名を乗車する際には、格納フロア(折りたたみ式フロア)を展開し、フロアを平らにします。スライドドア側の車いすの安全のため、フロアのドア側に凸部分も設けました。乗降の際には折りたたむことでじゃまにならないよう、最大の配慮をしました。

折りたたんだセカンドシートの下に車いすの方の足が入る。スペースを有効に利用している(D仕様)

格納フロア(折りたたみ式フロア)の開閉で、車いす4名乗車が可能になった(D仕様)

M仕様では、車いす2名乗車が可能。リクライニングタイプの車いすも乗せられる

こんなことも可能に

M仕様においては、これまでリクライニングタイプの車いすを乗車する際には、セカンドシートを折りたたまなくてはなりませんでした。しかし、今回セカンドシートはそのままで、大きなリクライニングタイプの車いす2名を乗車できるようになりました。
C仕様においては、車いすの横にシートを設け、介助する方が並んで座れるようになりました。
さらにD仕様、M仕様、C仕様のいずれも、メーカーオプション(オーテック扱い)の専用ストレッチャーを乗せることができるようになりました。

D仕様、M仕様、C仕様のいずれも専用ストレッチャーが乗せられる。 〈メーカーオプション(オーテック扱い)〉(※写真はC仕様)

車いすの横にシートを設けた。介助者が並んで座ることができる

大開口のスライドドア。ドアの開口部が高くなり、乗降もスムーズに行える

細かい点にも配慮

スライドドアの開口部も高くなり、乗降時、かがんだり、頭上を気にする必要がなくなるとともに、2 か所に設けられた手すりを使えば、乗降も安心です。
そのほかにも、車内が明るくなるよう、ルーフサイドウインドウを設けたり、車内を移動する際、じゃまにならないようシートベルトのバックルを床に埋めたり、車いす固定装置のスイッチ設置場所を変更するなど、これまで検討課題とされてきた細かい点にも多くの改良を行いました。

車いす固定装置のスイッチは、利用者には触れにくく、介助者には操作しやすい位置に設置

使わない場合、シートベルトのバックルは床に埋まっているので、じゃまにならない

小さく扱いやすく改良したリフター操作用リモコン

車内に明るい日射しを取り込むルーフサイドウインドウはチェアキャブのために開発した。〈メーカーオプション(オーテック扱い)〉

奥行きがあり、かかとまでしっかりと踏み込めるオートステップと視認性のよいオレンジ色の出てくる手すり〈メーカーオプション(オーテック扱い)〉で乗降が楽になった

左から、オーテックジャパンLV開発部チェアキャブグループ、内田健一氏、高野義和氏、小菅将彦氏

大部屋制度で、開発のスピードアップ

このように、さまざまな改良が行われましたが、その際、大きな役割を果たしたのが「大部屋制度」です。これまで別々の部屋にあった、生産技術部、実験部といったセクションのスタッフを、開発チームのフロアで一堂に会したのです。「何か意見を聞きたいとき、声をかけると、すぐに結論が出ます。これは開発のスピードアップに大きく貢献したと思います」(小菅氏)
完成した、NV350 キャラバン チェアキャブ。「みんなでがんばった自信作です。ぜひお試しください」。開発チームリーダーの高野氏のことばです。

(取材:2012年8月)