つり革タイプアシストグリップ 開発レポート

通常のアシストグリップを握ることが難しい方も、乗車中の姿勢保持ができます

リウマチなどにより手指に障がいがあり、これまでのアシストグリップを握ることが難しかった方が、輪形状になったグリップに手を通すだけで、乗車中の姿勢保持ができる「つり革タイプアシストグリップ」を開発しました。

握力がなくても、手をグリップに差し込むだけで、体を支えられる

「リウマチなどにより、従来のアシストグリップを握ることが難しい方が使用できるアシストグリップを開発してほしい」と、商品企画グループから開発グループに要請があったのは、2010年11月のことでした。
先行開発を担当する猪ヶ倉氏は、つり革タイプ、シートの横に設置したものなど4つのタイプを試作、リウマチの症状がある複数の方に、実際に試してもらい、つり革タイプのものがベストであることがわかりました。
ここから生産のスタッフなどにも参加してもらい、コスト面、生産面など、さまざまな角度からの検討が加えられ、商品化されていきます。これを担当したのが、端山氏です。

試作品を症状のある方に試してもらう

乗降の際、グリップはバネによって自動的に格納される

アシストグリップは、走行中に使用するものであり、乗降の際にピラーから下がっていてはじゃまになります。そこで、使用しないときには、バネの力で自動的に格納するようにしました。
また、使用する方の体型はさまざまです。そこで、一番使用しやすいつり革の長さはどのくらいなのか、角度はどのくらいがよいかなど、スタッフが何回も試し、議論が重ねられました。

重ねられた細かい配慮

小さなスペースにバネ、ストッパー、回転軸が納められている

技術的に難しかったのは、設置場所が限られているため、おおよそ90mm ×35mm × 20mm というスペースに、強度を保持しつつバネ、ストッパー、回転軸を納めることでしたが、既存の部品をカットするなどして、この問題を解決しました。さらに、グリップ素材である合成皮革の種類、手を入れる際に違和感がないよう縫い目は手前にこないようにする、合成皮革の断裁面が手に触れないよう縫い方を工夫するなど、細かい配慮がなされました。

素材の合成皮革は、手を差し込む際に違和感がないよう、縫い目が手前にこないようにした。また、素材の切れ目が手に接触しないよう縫製にも配慮した

こうして誕生した「つり革タイプアシストグリップ」は、新型「ノートアンシャンテ」、「マーチアンシャンテ」にオーテック扱いオプションとして設定され、今後、他のコンパクトカーにも設定されていく予定です。

オーテックジャパンLV開発部アンシャンテ開発グループ

猪ヶ倉哲也氏

端山恵介氏

(取材:2012年12月)